Astell&Kern KANN CUBE 感想/レビュー

選ばれたのはKANNCUBEでした

 DAP買い替えたいと思って1年ほど彷徨っていましたがついに決めました。新型コロナウイルスで試聴になかなか行けなかった事もあって1年前に聴いて良かったKANNCUBEが選ばれました。参考までに個人的にDAPに求めていた点をまとめておきます。

  1. 音質
  2. 持ち運びやすさ
  3. バッテリー
  4. 動作が早い

はい、1以外CUBEたん1個も満たしていません。本当にお疲れさまでした。結局、音が良ければ他はどうでもいいんですね~。正直CUBEたんでER4Sを鳴らしたときうっすらこれしかないと感じていました。そのときは結局使わなくなるのが怖くて買えなかった(お金も無かった)のですが、それからER4Sを鳴らせるものを見つけられないでいました。手持ちのER4SRやFealtyで聴いても素晴らしいので鳴らしにくいイヤホン、ヘッドフォン専門というわけでもないと思います。つまらない前置きはここまでにしてCUBEたんをスコっていきましょう!

CUBEたんのここが好き

 

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見た目、デザイン編

  大きさは必ず触れられると思うのですがオーディオ機器に求められるものは古来より重さであると相場が決まっています。なぜか分かりませんが重ければ重いほどいい音が出そうだと感じるようです(私も)。CUBEたんはAKで最も重く500g弱の重さがあります。つまり、大体中身の入ったペットボトル1本分です。確かに普通に考えれば重いのですが意外と悪くないというか、私の感覚ではそこまで重くないなという感じです。見た目もAKのDAPらしくかっこよく、CUBEたんの重厚感とスタイリッシュを併せ持つデザインは特に気に入りました。

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 ただ、1つ気になる点として持つと角が手に刺さるということがあります。AK100iiでは角が斜めに丸められていたのですが、CUBEたんはバッキバキにエッジを出しています。かっこいいんですがカバーがないとその重さも相まって痛いです。床に落として角が潰れてもショックですし、もう少し角が手に当たらないデザインならなお良かったですね。(実は一度机から床にCUBEたん落としてしまいました。CUBEたんは無傷でしたがフローリングが凹みました。)

バッテリー編

 ちょっとおかしいです。7300mAhあると聞いていたのですが手持ちのヘタったAK100ii(3150mAh)よりも体感で短く感じます。外に持ち出すときは電池の消費が激しすぎてハイゲインを使えませんし、ミドルゲインでも鳴らしながらだとなかなか充電が進みません。一番怖いのは熱で、充電しながらの再生だと異様に発熱します。ただでさえバッテリーの持ちが悪いのにこれ以上劣化してしまうと思うと困りました。特に据え置きとしてPCなどと繋げっぱなしにしようと考えている人は、バッテリーの劣化を諦めるか熱処理を考えたほうがいいと思います。本当に熱くなります。また、熱くなっていたときは若干動作が怪しくなっていました。PCとの接続でエラーが出たり動作がカクついたりなどです。

第4世代UI編

 慣れないのもあるのですが今の所、私は第2世代のほうが使いやすいように感じます。気になる点は音楽再生画面からその音楽(アルバム)を選択した階層へと戻りにくい点(戻るボタンを消したら使いやすくなりました)と、再生リストに並んでいる曲の順番を変えるのに一曲づつ長押しして移動する必要がある点です。どちらも第2世代のほうが圧倒的に使いやすかったです。そもそも右スワイプで再生リストを開きませんし、下スワイプの再生履歴も使いません。これまであったホーム画面を無くしたのは面白い試みですが、若干スワイプの反応が悪いこともあって曲の再生までタップのみで進められなくなったのはストレスです。そうは言っても不具合が無く曲の表示は速く安定しているのでさすがAKといったところですかね。繰り返しますがスワイプ多用させるUIのくせにスワイプの反応が鈍いです。(タップと誤解されます。)

2021/9/20 追記

タップのみで再生まで進められました。慣れればそこまで不満ではないですね。

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以前試聴したDAPの音質について

 イヤホンはER4S、ER4SR、Fealtyで聴きました。DAPのレビューはイヤホンの個性によって音が変わってしまうことからバランスド・アーマチュア型とダイナミック型で音の違いを区別しながら、また過去の試聴で得た記憶を辿りながら書いていきます。正直なんとなくでしかないのでいつもの書き散らし以上に参考になりません。以前DAPを試聴したのはちょうどN3proが発売された頃だったので記憶も正しいか不安です。

 

 当時、eイヤホンで試聴した機種はSE100、SP2000、N3pro、N6ii(A01,E01,T01)、Paw Gold Touchでそれから割と最近にヨドバシカメラでM15、DX300、Paw6000を試聴しています。それまではAK100iiを使っていたものですからAKを検討していたのですが、SE100が微妙にハマらずSP2000の音は好きだけど高すぎる。そして何よりもAKからAK100iiの音の素朴さ(高音のクリーンな感じ)が無くなり、代わりにSP2000はキラキラしているように聞こえて”音楽性の違い”ってやつを感じていました。隣にあったPaw Gold Touchは高音の空気感で包み込むSP2000とは対照的に低域から音を詰み上げるような感じでとても好感触だった記憶があります。買えないけど音の方向性としてはLotooがいいなと思いながら当時話題だったN3proを聴きました。どちらかといえばCayinはLotooに近い音色だと感じ、N3proの音を聴いたときにはこれでいいじゃんと買う一歩手前まで行きました。ネックになったのは真空管の音が好きでなかったことです。どうせソリッドステートモード(半導体)しか使わないならN6iiでいいじゃんと思い、これも聴いてみたところE01以外欲しくないと思いました。交換式マザーボードが売りなのにE01しか使わないなら別のでいいじゃんと思ったということです(こいつメンドクサイやつだな......)。

 まだ続くのですが一回ここまでのDAPの音の印象をまとめておきます。

  • SP2000:音の雰囲気、場の作り方は最高。中域から高域への伸びにある清涼感(AKらしさ)は唯一無二だと思います。反面音の芯はAK100iiよりだいぶ弱まりもっと空間にふわっと馴染むような鳴り方になりました。解像度はとても良くなっていますが、第二世代から音の輪郭の出し方でかなり癖をつけるようになっていますのでかなり個性派です。
  • SE100:あんまり覚えていません。印象に残っていないのでそんなに好きじゃなかったのかな。解像度はSP2000にも劣ることが無かったような気がします。
  • N3pro:音が良く、真空管で気分を変えられるのはとても面白いです。実は真空管より半導体の方が気に入りました。今回はメインDAPということで、N3proを買うならN6iiを選びたいのでパスしましたがサブとしては魅力的ですね。
  • N6ii:E01は音にキレがありつつも人の声など要所要所で温もりの感じられる音色でかなり好きな音です。A01はなんかもたつく感じがしてピンと来ませんでした。T01は解像度まで下がってあれ?って感じでした。悪くはないのですが全く同じ見た目でマザーボードの音を比較してしまうと、自分の好みに合わないものはどうしても相対的に悪く見えてしまいました。
  • Paw Gold Touch:欲しいです。基本的には下から積み上げる系の音なのですが、高域の伸びと消え方のスッキリ具合が両立していることに驚きです。ただこれも自分の中で基準とするには音への味付けが濃すぎるというか音が露骨すぎるような感じも若干しました。電源の起動が早く動作も安定し、高出力で音質も良いのですからDAPの理想みたいな感じです。正直これを買ってしまったらもう他のDAPを使うことはないだろうなと思いました。

 

 後半です。ヨドバシカメラDAPコーナーは空いているのでいいですね。M15とDX300、Paw6000を試聴しました。どれも良い感じではあったのですがやはりPaw6000がこの中では1番好みでした。M15とDX300はデカすぎてびっくりしました。M15は音質だけならこの中で1番良いと思いましたが、ボリュームがプラスチックでボロボロになりそうなので避けることにしました。Fiioのことだしすぐに次が出そうだとも頭に過りました。DX300は他のどのDAPよりも音色が色彩豊かな感じがしてとても良かったです。ただ、大きすぎるし交換モジュールはまた面倒なことを考えそうなので止めておきました。Paw6000はPaw Gold Touchが欲しくなるだけな気がしています。

  • M15:適度な密度感と滑らかさがあり、解像度もとても高いのですごく良いDAPだなと思いました。他のAndroidDAPと比較しても圧倒的に動作が良かったことも好印象です。出力もER4Sを駆動させるのに十分で音質面で悪い点は1つもないです。ボリュームダイヤルだけ少し残念ですが他に悪いところがないのはすごいです。ただいつも思うのですが他の製品のデザインをパクるのはあまり好きでないです。せっかくのフラグシップだしもっと個性的なものを作って欲しいと思いました。音はPaw6000のほうが好きな感じです。
  • DX300:華やかでわざわざDAPで聴く気分にさせてくれる特徴的な音でした。くっきり鮮やかで気持ちがいいです。iBasso製品は見た目が武骨なので音も低音が強いパワフル系なのかと思っていましたが、意外と低音は主張せずむしろ中高音のエネルギッシュさが印象にあります。これまたモジュール式で、新しく作られるであろうアンプカードを買う羽目になりそうだとか、例えばラインアウト専用のアンプカードが出たとしてそれに合うポタアンも欲しくなってしまいそうだとか考えて避けておきました。音はM15のほうが好きな感じです。
  • Paw6000:一聴してPaw Gold Touchを薄めた音だと思いました。ただ、むしろ空間表現が聞き取りやすくなったような感じがして好感触です。音の傾向としてとても好きな音なのですが、どうせ買うなら......とPaw Gold Touchがちらついてしまうので買おうと思えませんでした。駆動力も十分でPaw Gold Touchから音質が落ちたように感じないのでかなり魅力的です。

KANNCUBEの音質(アンバランス)について

低音について

 立体感がとても高くフロアに広がるような躍動感のある低音です。CUBEたんはでかくてごついですが低音の量は多くありません。むしろどちらかといえば低音は軽めで量は少ないもののキックなど必要なときにぐっと前に出てくる感じがあります。

中音について

  ボーカルは他のDAPに比べると少し遠目に聞こえるかもしれません。全体的にクールで弱ドンシャリっぽい感じなので、中音の主張は強くないのですが彫りが深く、声などの音はよく通るように聴こえます。楽器の音もすっきりと響くのでいつまでも心地よく聴いていられます。

高音について

 音質に関して、AKを買い続けている理由はほとんどこの高音にあると思います。他のメーカーは結構高音をガンガン鳴らしていく感じがするのですがAKは高音をできるだけ削ぎ落として一点突破で伸ばす感じが凄く好きです。CUBEたんは第4世代のなかでは1番キラキラしていない部類だと思うのですがだからこそ1番気に入りました。AKの高音の旨味というかのどごしみたいなものを1番分かりやすく聴けると思っています。

音場について

 解像度の向上以上に音場が特に良くなったと思いました。音場については何を書けばいいのかよく分からないのですが、特にER4Sにおいてはこれまでの頭内定位から臨場感のある頭外定位に変わったように思います。どちらかというとER4SRの空間表現に近づいたわけですが、ER4SRより空間に制限がなく曲の中に入ってしまったような境目のない広がりを感じました。ちなみにFealtyではそこまで音場の違いを感じず、むしろパンチが強くなったため少し狭くなったように感じています。

ノイズについて

 異常な高出力には代償があるんじゃないの、と思う人がいるかもしれません。答えはあります。Fealtyの場合は低ゲインでもヒスノイズが出ます。そうは言っても曲が流れている間はほとんど分かりません。曲の無音部はずっとサ~と言っています。ETYMOTIC RESEARCHでは出るはずもないレベルですので無問題とします。

最後に

 不満点は特にない(強がり)です。不安なところはこの発熱でバッテリーがどれだけ耐えられるのかといったところでしょう。こんなにデカくて重いのに普通に外に持ち歩いて使っています。ケーブルは作れると思うのですがXLRの有効な使いみち(相性の良いアンプなど)を思いつきません。おすすめの使い方があれば教えて下さい。

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